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スラックスを〝肩で穿く〟 〜サスペンダー(Suspenders)の効用〜

サスペンダー

 

スラックスを〝肩で穿く〟

〜サスペンダーの効用〜

 

皆さん突然ですが、「ジャケットは肩で着る」というフレーズを聞いた事ありませんか?

洋服屋でスーツを仕立てた時に、店員さんが言ってたとか、本で読んだことがあると言う人、結構多いと思います。

 

では、「スラックスを〝肩で穿く〟」はいかがでしょう??

聞きなれない言葉ですよね。

でも答えは簡単…

サスペンダーを使用してスラックスを穿くという意味です。

 

もう少し詳しく言うなら、

「スラックスを、自分で適当に決めたウエスト位置で縛るのではなく、肩から吊るす事で適切なウエスト位置をしっかりと保ち、ウエストから裾まで流れるような自然で美しいシルエットで穿く」と言ったところでしょうか。

 

ところで、ベルトの着用が当たり前になった昨今、サスペンダーを使用している人は一体どのくらいいるのでしょう?

 

僕の感覚では、本当にメリットを理解して「サスペンダー」を常用している人は、ほとんどいないように思います。

 

では、サスペンダーはどのような歴史を辿り、それを使用することでどのような効用が得られるのでしょうか?

 

今回は、その辺りを詳しく見ていきたいと思います。

興味がある人はぜひ、最後までお付き合いください。

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【1】サスペンダーの歴史

アメリカでは、スラックスを吊るすひもやバンドの事を「サスペンダー」と呼びますが、英国ではブレイシス(Braces)と呼びます。

どちらかといえば、こちらが正式名称でしょう。

洋服の歴史は、何をとっても英国の方が圧倒的に古いですからね。

 

英国では「サスペンダー」と言うと、ソックスガーターやアームバンドの意味合いの方が強くなるようです。

ちなみに、日本では「ズボン吊り」と言われてきました。

 

【ノーマン・ロックウェルの画集より】

ノーマン・ロックウェル

 

サスペンダーが誕生したのは、18世紀のフランスと言われています。

今のズボンと違い、当時のズボンの股上は胸のすぐ下の高さまであり、肩から紐のようなもので吊るす方が、変に動きが制限されることもなく合理的だったのです。

 

もちろん「ベルト」はこの時期、まだ存在していません。

ベルトが一般的に広く普及するのは、おそらく戦後になってからです。

 

サスペンダーには、「クリップ留め」と「ボタン留め」の2種類がありますが、やはりスーツに用いられる素材などを考慮すると、「ボタン留め」が正式なスタイルと言えるでしょう。

「クリップ留め」では、すぐに生地が傷んでしまいますからね。

 

英国やイタリアの、クラシックなスーツスタイルに昔から用いられて来たのもまた、「ボタン留め」でした。

背中の型も時期によって変遷を遂げています。

 

  1. 18世紀は主に「H型」
  2. 19世紀初頭からは、「X型」
  3. 19世紀中頃からは、「Y型」

となり、現在は「Y型」が主流となています。

「Y型」はスラックスのボタンの数が、前4つ・後ろ2つの計6つです。

【2】「サスペンダー用スラックス」と「ベルト用スラックス」

実は、スラックスには「サスペンダー用」と「ベルト用」の2種類があり、それぞれ形が異なります。

①「サスペンダー用スラックス」

まず、股上が深いことが大前提です。

ヒップからウエストにかけては、一般的なスラックスと同じで、ウエストバンドの下で一番くびれて細くなり、その後ウエストバンドの上に向かって広がって行きます。

 

【スラックスのフッティングの様子 『SHARP SUIT』より】

スラックスのフッティングの様子

 

②「ベルト用スラックス」

ヒップからウエストにかけて緩やかに絞られ、細くなっていき、ウエスト部分で留まるようになっています。

現在一般的に見られる形でがこれです。

 

【ノーマン・ロックウェルの画集より(ベルト用の形でサスペンダーも付けられるようになっていますね)】

ベルト用の形でサスペンダーも付けられるようになっていますね

【3】サスペンダーの効用

ここで僕が愛用している、〝一生モノ〟のサスペンダーをご紹介しましょう。

ブルックスブラザーズのサスペンダー

【すべて Brooks Brothersのもの】

 

サスペンダーを使用することで得られる「効用」は、何と言っても、ウエストを適正な位置で保ってくれることです。

これにより、スラックスの裾部分の余分なたるみを無くすことが出来ます。

 

上のノーマン・ロックウェル画集の中で、男性が穿いているスラックスの裾部分をご覧ください。

余計なたるみが一切ありませんね。

そして、クリースライン(スラックスの折り目)を非常に美しく見せてくれますので、足が長く見えます。

【4】サスペンダー着用のススメ

本来、サスペンダーは「ソックスガーター」と同様に下着扱いとされ、人目に晒すものではありませんでした。

留めるためのボタンもスラックスの内側につけることが主流でした。

 

しかし、いつしか映画などでもジャケットを脱いで、シャツ一枚でサスペンダーを露出するシーンが増え、一般の紳士もネクタイと同様の考え方で、お洒落のポイントとして取り入れることが多くなりました。

 

2017年現在でも、相変わらず「サスペンダーは人前に晒すものじゃない」と言う人がいますが、僕は、ネクタイと柄を合わせるなど、お洒落のポイントとして存分に楽しめばいいと思っています。

 

しかし…

  1. ボタン留めのサスペンダーを使用する(生地の劣化を防ぐ意味で)
  2. 股上の深いスラックスを選ぶ

 

この2つだけは、最低限守ってください。

僕からの個人的なお願いです。

よろしくお願いします。

 
【参考文献】

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