〝準備とは言い訳となり得る全てのことを
ひとつずつ排除する作業である。〟
〜大リーガー イチロー選手〜
「ねえ、ペン持ってない?」
「すいません、書くもの持っていますか?」
こういうシュチュエーションで、胸元からスッとペンが出てくる人、あるいは使い慣れたペンケースからサッとペンを出せる人…
こんな人を僕は〝本当の意味で〟信用します。
使っているペンを見ると、その人の〝内面〟がそのまま見えてくると僕は考えているからです。
スーツ・時計・靴・ネクタイと、しっかり身だしなみを整えて隙がない営業マンであっても、最後、契約のサインの時に、安物のペンが出てきた瞬間、もう底がみえますね …
逆に、そう言う場面でサッと使い慣れた〝その人拘りの(ただ高級な…ではダメです)ペン〟が出てくると、
この人は底が知れない人だ…と感服させられるわけです。 僕はそこを決して見逃しません(笑)
といっても、これはもう職業病みたいなものでして、洋服屋、特にそう安くないスーツなどを売るような仕事を長いこと続けていると、
お客様が身につけているものは、瞬間的に目に入ってきてしまうのです。 もうホント無意識に…。
ちなみに僕は、お客様に差し出すペンにはかなり意識を注いでいます。
具体的には、常に3本用意しており、接客の中での会話や仕草を通して、自分が感じ取った〝お客様の品格〟に応じて、ご精算時サインを頂く時に、差し出すペンの種類を変えています。
「このお客様に、このペンを出したらどんな反応してくれるかな…?」
とか、実は密かな楽しみだったりします(笑)
では、ここで長年愛用のしている僕のペンを紹介します。
【写真は拡大できます】
【右上;CROSS タウンゼントボールペン / 左下;Brooks Brothers(Montegrappa製) ローラーボール / 右下;CROSS タウンゼント ローラーボール(MADE IN U.S.A.)】
僕は水性ローラーボールの書き心地が好きなので、3本中、2本がローラーボールです。アメリカのCROSSのモノが多いですね。
理由は単純で、社会人になって最初に手にしたペンがCROSSだったからです。
それ以来、CROSSを買う事が多いです。今回載せなかったモノでもあと2本所有しています。(洋服屋のペンケースの中で紹介しています。)
少し脱線したので話を元に戻しますと、
『差し出す人を想定して、ペンを揃えておく』という行為は、かなり高度な〝準備〟だと思います。
なぜなら、ペンは日常、決して人目に触れることが多くないモノですし、
どちらかと言うと、ジャケットの内ポケットや鞄の中で出番を待っている事が多いですから、なかなか陽の目が当たらない…。
しかし、だからこそ、
そこまで気を配れる人と言うのは、信頼に値するのではないか。
と、なんとなく思えてくるわけです。
(もちろんそう言う人はスーツにしろ、靴にしろネクタイにしろ、素敵なモノを身につけていらっしゃるのですが…)
契約時の署名や、お買い上げ時に署名を頂く際の1本のペン。
これを甘く見ているビジネスマンが本当に多い気がします…
「そもそも日本は捺印の文化だからいいじゃないかっ!」
……果たして、そう言う問題でしょうか。
この記事の冒頭に、僕が仕事をする上で大切にしている言葉を載せました。
最後に少し触れておきます。
どんな分野でも〝プロフェッショナル〟と呼ばれる人は、〝準備〟に相当な時間をかけます。
それは、最高のパフォーマンスを引き出す為であり、イチロー選手が言うように、言い訳する余地を残さない為でもあります。
洋服の世界では、〝準備〟は〝身嗜みを整える〟と言う行為に当たります。
ビジネスマンがその日会う人(お客様)を想像して、
正しくスーツを着る・シャツをプレスする・正しくネクタイを巻く・靴を磨く・そして拘りのペンを揃えておく…
これらの行為は全て、
仕事に入る際の相手(お客様)に対する〝敬意の表れ〟であり、
自分自身が最高のパフォーマンスを発揮する為の〝準備〟であり、
そしてさらには…
自分が出した結果に対して、〝言い訳しない〟為に行う〝準備〟でもあるんですね。
いずれも、プロとして仕事に向き合う際の、強い決意と覚悟を感じるものです。
きっと、こういった単純ともとれる行為の反復が、
つまり、こういった行為を習慣化(ルーティーンワーク化)して、身体に染み込ませていく時間とその量が、
それを怠ってきた人との、〝埋めがたい差〟となって実に様々な部分に現れてくるのでしょう。
まさに、〝量〟は〝質〟に転化していくのですね…
僕は、そういった〝人から見えないところでする準備〟の長期的な効果を強く信じています。
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