〝60/40 マウンテン・パーカ〟という傑作
〜シエラ・デザインズ〜
こんにちは。
今年は季節が進むのが早く、すっかり秋らしくなってきましたね。
この季節になると、僕が毎年決まって着るものが〝3つ〟あります。
- ドリズラー・ジャケット(スイングトップ)
- オイルド・コート
- マウンテン・パーカ
今回はその中の、「マウンテン・パーカ」をご紹介しようと思います。
どうぞ最後までお付き合いください。
【1】『シエラ・デザインズ』の誕生
「マウンテン・パーカと言えば?」という質問をした時、
服好きならほとんど反射的に、こう答えが返ってくるはずです。
〝シエラ・デザインズ(SIERRA DESIGNS)〟
そのくらい、『シエラ・デザインズ』は「マウンテン・パーカ」の代名詞的存在なのです。
その創業は1965年。
ジョージ・マークスとボブ・スワンソンの2人の男性によってでした。
【ジョージ・マークス(右)とボブ・スワンソン(左)】
アメリカで「アウトドア」が大流行する少し前の1960年代初頭、
2人はカリフォルニア州のバークレーに住み、毎日アウトドア・スポーツやキャンプに明け暮れていたそうです。
そんなある日、2人は海で激しい嵐に巻き込まれ、遭難してしまいます。
幸いにも九死に一生を得て、2人は命からがら生還するのですが、
この時、
「自分たちが着ているウェアが、緊急時には生命を左右する」ということを痛感したそうです。
この経験から、「自分たちが生命を託せるウェアを作ろう」と決心し立ち上げたのが、この「シエラ・デザインズ」です。
当時は家の倉庫を使い、足踏みミシンでコツコツと地道に制作に励んでいたといいます。
そして1968年、彼らの努力が実を結び、「歴史的名作」がこの世に誕生します。
「60/40 マウンテン・パーカ」です。
【当時の商品つけられていた フライヤー】
【2】60/40 マウンテン・パーカという傑作
ここで、僕が愛用している「シエラ・デザインズ」をご紹介します。
【シエラ ・デザインズ 60/40 マウンテン・パーカ】
近年、次々とハイテク素材が発表されている、この2017年においても尚、
この「60/40 マウンテン・パーカ」が、〝歴史的傑作〟として多くの人に愛されている理由は、
「オリジナルから変えるところがひとつもない」と言われる、
その〝完成度の高さ〟にあります。
①60/40クロス(ロク・ヨン クロス)
まず、ひとつ目にしてその決め手となるのが、このマウンテン・パーカに使用されている、
「60/40クロス」
〝ロク・ヨン クロス〟の愛称で世界中で親しまれている、非常に機能性に優れた生地です。
この名前の由来は、その素材の混紡比率から来るもので、
■横糸に、30番手という太めで強度のあるコットン糸
■縦糸に、分子密度が高くこれまた強度のあるナイロン糸
をそれぞれ使用し、
その混紡比率が、
コットン58%・ナイロン42%であったことから、
「60/40〝ロク・ヨン〟」と呼ばれるようになったのです。
しかし、この混紡比率、
「水分を含むと膨張する」コットン(天然繊維)の特徴と、
「分子密度が高く、水に強い」ナイロン(化学繊維)の特徴を
踏まえた上で、緻密に計算され生み出されたもので、
雨や雪といった悪天候時には、
6割のコットンが膨張して生地の隙間を埋め、生地全体の密度が増します。
残り4割のナイロンはもともとの性質上、水を弾き、風をシャットアウトしてくれます。
つまり、
見事なまでの撥水性と防風性を備えた、歴史上稀に見る〝機能素材〟が、ここに完成したのです。
この 「60/40クロス」は、Gore-Texなどのハイテク素材が存在ない1960年代後半にあっては、非常に画期的なもので、その衝撃は、世界中を駆け巡りました。
ちょうどその頃、アウトドアが大流行したアメリカ国内はもちろん、
1970年代に日本にも紹介され、一大ムーブメントを巻き起こしました。
②遭難経験で得た〝知恵〟が満載の各種ディテール
その他にも、
マウンテン・パーカ自体に搭載された、〝全く無駄のない〟各種ディテールが特筆に値しますので、以下に紹介します。
■1番上までボタンを留めフードをかぶり、さらにドロー・コードでそれを絞り込むこむことで、風と雨を完全にシャットアウトできる構造になっています。
■「デイ・パック1つ分ほどの収納力がある」と言われている、7つのポケットが外側と内側に配されています。
裾部分も、ドロー・コードで絞り込むことで、下からの雨・風もシャットアウトすることが出来ます。
【3】変わらないモノ・変える必要のないモノ
ほとんど全てのものが短サイクルで〝変わっていく〟今の世の中において、
〝変わらないモノ〟〝変える必要のないモノ〟が、少ないながらも確かに存在します。
『シエラ・デザインズ』の 60/40パーカは、まさにそのうちのひとつなのです。
確かに、Gore-Texのようなハイテク素材に比べれば、劣る部分も多く見られますが、それらのハイテク素材が、60/40クロスを参考にして開発されたのもまた事実なのです。
【4】温故知新
服に限らず何でもそうなのですが、
〝古い知恵と新しい知恵〟を両方知った上で、どちらも大切に残していきたいモノですね。
大切なことは、
〝新しい知恵〟の恩恵を、ただ単に享受するのではなく、〝古い知恵もちゃんと知っておく〟
ということではないでしょうか。
〝温故知新〟
「古きを温め、新しきを知る」
日本人には本来、それができるはず。
僕はそう信じています。
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