ゴルフ・ジャケット
〜「G9」と「ドリズラー」〜
こんにちは。
このブログは、〝洋服屋の一生モノブログ〟というタイトルからも分かる通り、キーワードは、〝一生モノ〟です。
「〝一生モノ〟というフィルターを通してモノを見る」
ことで、世の中に氾濫したモノを一度篩(ふるい)にかけ、本当に良いモノだけを抽出していこう。というのが大きなテーマです。
突然ですが皆さん、
「ゴルフ・ジャケット」って何かわかりますか?
なかなかすぐには、思い浮かびませんよね。
ゴルフをやっていない人は、なおさらピンと来ないはずです。
「ゴルフ・ジャケット」とは、
日本で「スウィング・トップ」と呼ばれているもので、
「ウィンド・ブレーカー」という方が、聞き馴染みがあるかもしれません。
しかし、この「スウィング・トップ」という言葉は、
1960年代に「VAN」を創設した、石津謙介氏が考案した
いわゆる「和製英語」で、欧米では通じません。
「ゴルフで、スウィングする時に上に着るものだから、
〝スウィング・トップ〟」
なんともユニークなネーミングですね。
正確には、
「ゴルフ・ブラウス」とか「ゴルフ・ジャケット」と呼ばれています。
その「ゴルフ・ジャケット」の代表格として世界的に有名なのが、
バラクータ社の「G9」と
マクレガー社の「ドリズラー・ジャケット」です。
順に、紹介していきますね。
【1】マクレガー社の「ドリズラー・ジャケット」
まずは、マクレガー社の「ドリズラー・ジャケット」から。
この「ドリズラー・ジャケット」は、
1952年に、アメリカのスポーツウェア・メーカーである、
「マクレガー社」によって紹介された、
ナイロン製の「ゴルフ・ジャケット」の商品名です。
「ドリズラー(Drizzler)」という名称は、
英語で「細雨」や「霧雨」を意味する、
「drizzle」に由来します。
つまり、典型的な「ウィンド・ブレーカー」ですね。
実はあまり知られていませんが、
正式名称はもっと長いもので、
「スコティッシュ・ドリズラー・マイティ・マック」
と言います。
形状やデザインは実にシンプルで、
- シャツ・カラー(シャツのような襟)
- ジッパー・フロント
- 斜めフェルト・ポケット
- カフ付きの袖
- 素材はナイロン製のツイル(綾織に仕立てたもの)
- 色は、赤や黄色・コバルト・ブルーといった派手なものが発売当初は多かった。
とまあ、至って普通のスポーツ用「ウィンド・ブレーカー」だったのです。
【マクレガー社 ドリズラー・ジャケットの広告】
しかし、
これが1960年代半ばに、ファッション・アイテムとして世界中から注目を集めることになるのです。
それに一役買ったのが、
1955年に映画『理由なき反抗』の中でジェームス・ディーンが見せた、
真紅のスコティッシュ・ドリズラーでした。
【映画『理由なき反抗』の中のジェームズ・ディーン』】
今見ればなんてことないスタイルに見えますが、
1950年代のアメリカにおいて、この
- Tー シャツ
- ブルー・ジーンズ
- スコティッシュ・ドリズラー・ジャケット
- ワークブーツ
というスタイルは、
自動的に「反社会的」・「反抗的」とみなされた為、かなり衝撃的でした。
実際に映画の中でも、
大人たちが来ている〝スーツスタイルとの対比〟
が、かなり意図的に表現されています。
残念ながら、ジェームズ・ディーンは、
不慮の事故により、24歳という若さでこの世を去りますが、
これがきっかけで、
マクレガーの「ドリズラー・ジャケット」がファッション・アイテムとして、世界中に認知されることになったのです。
※ちなみに「T–シャツ」と「ブルー・ジーンズ」も、
これがきかっけで、初めてファッション・アイテムとして認知されることとなり、
現在僕たちが着用しているような姿に発展していくのです。
【2】バラクータ社の「G9」
続いて2つ目の、バラクータ「G9」について。
「G9(ジー・ナイン)」とは、
英国・マンチェスターのレインウェア・メーカー・
「バラクータ(BARACUTA)社」の代表商品である、
ゴルフ・ジャケットの商品名です。
そのデビューは、1948年。
名前は、
「バラクータ社で9番目に開発されたゴルフ・ジャケット」
から取られたもので、
「G」はゴルフ・ジャケット、「9」は9番目という意味です。
先ほど紹介した、マクレガー社の
「スコティッシュ・ドリズラー・ジャケット」と並び、
「2大ゴルフ・ジャケット」と称されるうちの一角です。
形状やデザインの特徴として、
▪「ドックイヤー・カラー」
襟型が犬の耳に似ていることから、命名されました。
【写真は、僕が所有している「フレッド・ペリー」のもの】
▪「アンブレラ・ヨーク」
背中部分に施された補強部分の「ヨーク」が傘の形に似ていることから命名されました。
【写真は、僕が所有している「フレッド・ペリー」のもの】
▪封筒型の斜めフラップ・ポケット
【写真は、僕が所有している「フレッド・ペリー」のもの】
▪ゆったりしたラグラン・スリーブ
▪袖と裾部分がリブ仕様
▪タータンチェックの裏地
と、こちらは各所に独特の形状やデザインを備えています。
デビュー当時は、専らゴルフ・コースでのみの着用でしたが、
こちらも1960年代に、
有名人がテレビや映画で着用したことで、
一気に「ファッション・アイテム」に昇華していくことになります。
まずは、1964年にアメリカで放映されたTV番組
「ペイトン・プレイス」で、「ロドニー・ハリントン」役を演じた、
ライアン・オニールが「G9」を着用したことで、
その後、G9型のゴルフ・ジャケットが、
「ハリントン・ジャケット」
と呼ばれるようになりました。
そして、極め付けは
1968年の映画 『華麗なる賭け』の中で、スティーブ・マックイーンが着用したことでしょう。
【映画『華麗なる賭け』のスティーブ・マックイーン】
【スティーブ・マックイーンは映画以外でも、このジャケットを愛用していたそうです】
その後、
アメリカのアイビーリーガー達がキャンパス・ウェアとして着用したこともあり、
1970年代には、その人気は不動のものとなりました。
ちなみに、日本人でこの「バラクータ・G9」を愛用したことで有名な人物は、
故 高倉健さんです。
【高倉健さんがバラクータ・G9を愛用】
【3】僕が愛用している「ゴルフ・ジャケット」
最後に、
僕が愛用している「ゴルフ・ジャケット」を紹介して終わりにします。
僕は毎年、春と秋の端境の時期には毎日
「ゴルフ・ジャケット」を着ていますので、たくさん所有しています。
【Brooks Brothers のG9型 ゴルフ・ジャケット】
【FRED PERRYのG9型 ゴルフ・ジャケット】
【GANT RUGGERのゴルフ・ジャケット】
【TRAFALGRERのゴルフ・ジャケット】
【Brooks Brothers のG9型 ゴルフ・ジャケット】
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