最果ての島のツイード文化 〜ハリスツイード物語【中編】〜

 

最果ての島のツイード文化

〜ハリスツイード物語〜

【中編】

 

こんにちは。

このブログは、

〝洋服屋の一生モノブログ〟というタイトルからも分かる通り、

キーワードは、〝一生モノ〟です。

 

「〝一生モノ〟というフィルターを通してモノを見る」

 

ことで、世の中に氾濫したモノを一度篩(ふるい)にかけ、

本当に良いモノだけを抽出していこう。

というのが大きなテーマです。

 

今回は、『ハリスツイード物語【中編】』お送りします。

【中編】は、

  1. 「ツイード」について
  2. 世界で唯一商標登録されているツイード生地
  3. 僕が愛用しているHarris Tweedのジャケット

という構成で進めていきます。

 

興味がある方はぜひ、最後までお付き合いください。

【1】「ツイード」について

さて、

これまで「Harris Tweed」つまり「ツイード生地」について話してきましたが、この「ツイード」とは一体どのような織物なのでしょう。

 

辞書を引くと、こうあります。

ツイード(Tweed)

イギリス・スコットランドの毛織物の一種。

もともとはスコットランド産の羊毛を手紡ぎした太い糸を、手織りで平織りまたは綾織りにした、粗く厚い毛織物。

実に簡潔にまとまっていて、わかりやすいですね。

 

これをもう少し詳しく補足すると、

スコットランド・アイルランド地方の毛織物である「ツイード」のスタートは、「農民の防寒着」としてでした。

 

厳冬の気候から家族を守るため、家で飼育している羊の毛を刈り取り、家庭で手紡ぎ(ホーム・スパン)し、木製の織機を用い、家族のために丁寧に織り上げたものだとされています。

 

「ツイード」の語源は諸説あるのですが、一般的に定説となっているのが、「読み間違い」による説です。

 

1830年頃 ロンドンの生地商人が、スコットランドの国境にある会社から受け取った書類の中に、生地の柄の名称として「ツイール(Tweel)」と書かれていました。

(おそらく綾織物(ツイル)のことだったのではないかと推測されます。)

 

しかし、この生地がイングランドとスコットランドの国境付近にある、「ツイード河」付近で織られていたことから、それを読んだ生地商人が、「ツイード(Tweed)」と読み間違えてしまい、

この生地をそのまま「ツイード(Tweed)」として売り出したところ、これが評判を呼び、定着してしまった。

という説です。

 

他にも類似の〝伝説〟がいくつか語り継がれていますが、真偽のほどは定かではありません。

 

しかし、18世紀の終わり頃には、スコットランド・アイルランドを中心とする当時のイギリス連合国全土で、ツイードが盛んに織られるようになっていたことは事実で、

 

▪アウター・ヘブリディーズ諸島で織られる

   「ハリスツイード」

▪アイルランド北西部で織られる

   「ドニゴール・ツイード」

▪シェトランド諸島で織られる

   「シェトランド・ツイード」

 

などが次々と生まれていきます。

 

さらに、

19世紀には「農民の防寒着」から、貴族たちが釣りや狩猟の時に着る「カントリー・ウェア」に格上げされ、

 

現在知られているような「高級素材」としての地位を確立していくのです。

 

そして、

この時期に生まれた各地のツイードのうち、商標登録されている世界唯一のツイード生地が、「Harris Tweed」なのです。

【2】世界で唯一、商標登録されているツイード生地

「Harris Tweed」の名前は知っていても、それが

 

イギリス国会制定法によって守られている、世界で唯一の生地である。

 

ということを知っている人は、あまり多くありません。

 

ちなみに、1993年 イギリス国会で正式に、

「Harris Tweedの定義」が以下のように定められました。

 

▪「Harris Tweed」を生産できるのは、ハリス島、ルイス島、ウィスト島、バラ島と、その周辺のアウター・ヘブリディーズ諸島の島に限る。

▪ピュア・ヴァージンウールのみを原料とし、染色・紡績・織り上げまでの全ての工程を、各島内で行わなければならない。

▪「Harris Tweed」を織り上げるのは、島の織り手の自宅とし、全て人力による手織りである事。

 

※ピュア・ヴァージンウール

  →羊から刈り取られ、初めて使われるウールのことで、未脱脂のものを指します。自然の油分をたっぷり含んでいるので、湿気に強く、また保温性と耐久性に優れています。

【ルイス島の羊 (手前は、ブラック・フェイス種)】

【ルイス島の羊 (手前は、ブラック・フェイス種)】

 

以上の条件を満たしたものだけが、最終的に商標登録である検印スタンプが押され、

 

「Harris Tweed」と名乗ることが許されるのです。

 

その後 時代の要請に対応する形で、多少の改正はあったものの、

現在でもこの基準は、ほぼ当時のまま厳格に守られています。

 

生産工程の具体的な流れを簡単に追っていくと、

 

スコットランド産の羊から刈り取られた、ピュア・ヴァージンウールは、

「MILL(ミル)」と呼ばれる紡績工場で最初に染色されたのち、紡績され、「原毛」から「毛糸」になります。

 

現在ルイス島では、

▪『ハリスツイード・テキスタイル』社

▪『ハリスツイード・スコットランド』社

▪『ハリスツイード・ヘブリディーズ』社

の3つのミルが稼働していますが、

 

現在のハリスツイードの生産量の約90%は、

2007年に操業を開始した『ハリスツイード・ヘブリディーズ』社で作られています。

 

ハリスツイード・ヘブリディーズ社

ハリスツイード・ヘブリディーズ社

 

こうしてミルで染色・紡績された「毛糸」は、決められた柄ごとに、経糸用と緯糸用にセットされ、デザイン見本、さらには注文書と一緒に織り手に届けられます。

 

この注文書に従い、島の織り手の自宅で丁寧に織り上げられ、「毛糸」から「生地」になっていくのです。

 

【島の織り手によって、丁寧に生地が作られる】

 

そして、織り上げられた生地は再びミルに戻され、洗いをかけ、地直ししたのち、50メートルごとに検品にかけられます。

 

厳しい検査に合格したものには、3メートルごとにハリスツイードの商標登録がスタンプされ、製品として全世界に出荷されます。

 

現在のマーケットは、主にアメリカ・ドイツ・日本です。

そして2012年には、その中で日本が最大のマーケットになりました。

 

 

僕たちが今手にしている「Harris Tweed」は、現地で上記のような厳しい条件をクリアし、さらには、厳格な検査を通過した、

 

〝Harris Tweedの中の精鋭達〟なのです。

【3】僕が愛用しているHarris Tweedのジャケット

最後に、僕が愛用している「Harris Tweed」のジャケットを紹介して【中編】を終わります。

 

5年前にBrooks brothersでオーダーした、Harris Tweedのジャケットです。5年間ガシガシ着て、柔らかくなり体に馴染んできました。

 

全くヘタれることもなく、毛布に包まれているような暖かさが最高です。

 

「一体何年着られるんだろう」と考えさせてくれる、本当に頼もしい1着です。

 

まさに、僕の〝一生モノ〟のジャケットです。

 

【Brooks brothers のジャケット】


【参考文献】

 

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