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知っておきたい! 〜スーツの〝SUPER〇〇’s〟の意味とそこに隠された罠〜

 

知っておきたい!

〜スーツの〝SUPER〇〇’s〟の意味とそこに隠された罠〜

 

 

こんにちは。

いつも「洋服屋の一生モノブログ」をご覧いただきありがとうございます。

僕は服飾業界に身を置く33歳です。

 

この業界でのキャリアは、今年で節目の10年に到達しました。

※詳しくは、運営者プロフィールをご覧ください。

 

ここ数回、連続して紹介しています〝洋服の豆知識・お役立ち〟シリーズ。

おかげさまで沢山のアクセスを頂いております。

ありがとうございます。

 

今回も、スーツに関する〝豆知識・お役立ち〟情報をひとつご紹介します。

 

皆さん、スーツを下見に行ってこんな言葉に出くわしたことありませんか?

「SUPER〇〇’s」

例えば、〝SUPER110’s〟や〝SUPER120’s〟といったもの。

ありますよね。

 

「こちらはSUPER120’sのウールを使ったイタリアの高級生地です。」なんていう店員の言葉も良く耳にするフレーズだと思います。

しかし、この「SUPER〇〇’s」表記は〝くせ者〟です。

 

なぜなら、

 

「SUPER表記」の数字が高いもの=高級生地とは必ずしもならない。からです。

 

 

そもそも、〝SUPER120’s〟がどういう意味なのかを説明してくれる店員はほとんどいません。

驚くべきことに、聞いても〝意味を知らない〟ことも少なからずあります。

 

とうことで、

今回は、この〝SUPER表記〟の意味と、その表記に隠された問題点をご紹介します。

 

どうぞ最後までお付き合いください。

 

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【1】〝SUPER〇〇’s〟が示す意味

まず、最初に覚えておいてほしいのは、

 

〝SUPER〇〇’s〟表記は「原毛段階での太さ」を距離換算で表した指標である。

 

ということです。

※原毛…羊から刈り取ったままの状態の毛。糸にする前の毛

 

ちなみに、

シャツやストッキングなどの生地の目安に使われる「番手」や「デニール」は、〝糸にした状態での太さ〟を表す単位です。原料単位ではありません。

 

 

それに対して「SUPER表記」は〝原毛単位の太さ〟を距離換算した指標なので、

 

〝SUPER〇〇’s〟とは、

「重量1㎏で、〇〇kmの長さの単糸を作ることができる原毛を使用している」という意味になります。

※単糸…紡績した1本のままの糸のこと。この単糸を2本撚り合わせると「双糸」となり、2プライ・ヤーンなどと呼ばれます。

 

例えば〝SUPER120’s〟だと、

「重量1㎏で、120kmの単糸を作ることができる原毛を使用している」と言いたいのです。

 

すなわち、

数値が大きければ大きいほど、細くて繊細な〝原毛〟を使用していると言えるのです。

 

こうやって見ると、

SUPER表記は、確かにある程度は高品質の証となり得る指標なのですが、実はいくつもの問題点をはらんでいるのです。

 

次章では、SUPER表記の問題点について詳しく見ていきましょう。

【2】SUPER表記に潜む罠

ここまでで、SUPER表記に関して、次の2点をお伝えしました。

  • 〝SUPER〇〇’s〟は「原毛段階での太さを距離換算した指標」である
  • ゆえに、数値が大きくなるほど細くて繊細な〝原毛〟を使用している

 

しかし、注意すべきは、

SUPER表記の数値はあくまで、「原毛段階での理論値」に過ぎない

という点です。

 

原毛をスーツとしての使用に耐えられる強度の糸や生地にしようとすると、半分から2/3程度に縮めて紡績する(=糸にする)必要があります。

 

つまり、

いくらSUPER表記の数値が高いもの(=細くて繊細な原毛)でも、強度を考慮した上で糸や生地にする段階で〝縮められ、太く丈夫に加工される〟のです。

さらに糸にした段階で、双糸になるとさらに太く丈夫になります。

ちなみに、スーツやジャケットではタテ糸・ヨコ糸ともに双糸が用いられることがほとんどです。

これは、スーツとして仕立てられ、それを人が着て働くという「本来の使用目的」を考えれば当然のことですよね。

 

ですから絶対に、

この〝SUPER表記〟をウールになった時の糸の太さ(=糸番手)と勘違いしないでほしいのです。

「SUPER120’s」は「120番手の糸」ではない!

と覚えておいてください。

 

そして、

さらに服飾業界の〝絶望的な問題点〟をお伝えしなければなりません。

 

それは、

SUPER表記を最終的に生地に示す際の条件が、

非常に緩く、もはや〝ほとんどないに等しい〟ということです。

 

具体的に言うと、

例えば、生地全体に対して、SUPER120’sに相当する原毛が1%でも含まれていれば、その生地は〝SUPER120’s〟と表示をつけて販売できてしまうのです。

 

これは非常に恐ろしい罠です。

 

近年、国際的に基準を厳しくし規制をかける方向で進んできていますが、残念ながらまだまだ追いついておらず、こうした問題点を抱えたままの生地が大量に出回っているのが現状です。

 

ですから、

スーツを購入する際は、〝SUPER〇〇’s〟はあくまで目安程度に考えおくことをおススメします。

 

また、

「SUPER〇〇’sの生地」ばかりをアピールしてくる店員や洋服屋は信用しない方が良いです。

 

そんな時は、

「〝SUPER〇〇’s〟ってどういう意味なんですか?」と質問するといいですよ。

 

人によっては、それ以上喋れなくなります(笑)

 

【3】スーツ購入時のアドバイス

スーツの見た目は、完成すると素人には同じように見えてしまうので、売り手側からしたら、ある意味ごまかしが効きます。

 

買う側からすると分からないことだらけですよね。

 

かといって、

日々の仕事で忙しいのに、スーツの専門的な構造まで勉強するのは非常に骨が折れます。

 

ですから、購入時には判断基準として、

その店の歴史の長さがそのまま品質の良さを表す

と、ぜひ覚えておいて欲しいのです。

 

長い間スーツやジャケットを作り続け、評価され続けてきたブランドは、例外なく世界中の良い生地を保有していますし、優良な縫製工場を押さえるにあたっても、長い年月をかけて築いた信頼関係がやはりものをいいます。

 

さらに、

こうしたブランドには優秀な販売員が集まるので、適切なアドバイスが受けられる可能性も高くなります

 

その代わり、優秀な販売員からは手厳しいことも言われます。

「ご自身の努力で、もうちょっとお腹を引っ込めるとより格好良く着こなせます。頑張りましょう!」などです。

優秀な販売員ほど、ダメなものはダメと言うし、似合わないものは似合わないと言うものです。

 

そして、

値段は最低でも70,000円くらい〜だと思ってください。

誠実なモノづくりを心がけてスーツを作れば、どうしてもそのくらいの価格になるのです。

〝心と予算〟には余裕を持ちましょう。

 

逆に、

量販店で〝SUPER130’s 〟表記の生地が使われているのに、25,000円など安価で売られているスーツの裏側には、生地に先に述べたような〝巧妙なカラクリ〟が隠されている可能性が高いと言えます。

 

と同時に、

  • 縫製段階
  • 表地と裏地をつなぐ役目の芯地

など、見えない部分が簡略化されているので、どう考えても1年〜2年サイクルでの使い捨てです。

 

25,000円程度の使い捨て感覚のスーツを10年で5回買うか、信頼できる洋服店で80,000円程度のスーツを買って手入れしながら10年以上着るかは、それぞれの価値観なので自由だと思いますが、

 

僕の個人的な意見としては、前者は経済的にも健全とは言えないですし、ウールが天然素材であるという観点から見ると、環境面でも不健全だと考えます。

 

なにより、

モノを大切にしてる人は話に深みがありますし、体に馴染んだ服は、その人の魅力を最大限に引き立ててくれるので、人間的にも素敵ですよね。

 

 

 以前読んだ本の中にあった会話で、僕が好きなものがあります。

 

A君   ;「Bさんのスーツ格好良いですね。」

 

Bさん;「ありがとう。これ10万円したんだけど、10年以上大切に着ているんだよ。」

 

A君   ;「10万円ですか!?やっぱり稼いでいる人は違うな〜。僕なんか25,000円のスーツしか買ってもらえないんで、すぐダメになりますよ〜。」

 

Bさん;「いやいや、僕は君みたいに安いスーツをたくさん買えるほど裕福じゃないんだよ。」

 

…強烈な「ブラック・ユーモア」ですよね。(笑)

 

Bさんの人間性は置いておいて、この短い会話の中には大切なことがたくさん詰まっているように思えます。

 

皆さんは、どう思いますか?
【参考文献】

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