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アメリカントラディショナルとは何か?【1章】アメトラを紐解く4つの時代区分とアメリカンスタイルの原点

 

アメリカントラディショナルとは何か?

【1章】アメトラを紐解く4つの時代区分とアメリカンスタイルの原点

 

 

こんにちは。

いつも「洋服屋の一生モノブログ」をご覧いただきありがとうございます。

僕は服飾業界に身を置く33歳です。

この業界でのキャリアは、今年で節目の10年に到達しました。

※詳しくは、運営者プロフィールをご覧ください。

 

前回の「アメリカントラディショナルとは何か?【序章】」では、

日本人の多くが抱いている「アメリカン・トラッド論」がアメリカ服飾史の中の一点を限定的に捉えただけの「時が止まってしまったアメトラ論」であることを説明しました。

 

そしてそれを、「日本式ガラパゴス・アイビー」と表現しました。

 

今回からの「アメリカントラディショナルとは何か?【本章】」では、アメリカン・トラッドの本質をわかりやすくまとめていきます。

 

どうぞ最後までお付き合いください。

 

 

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【1】アメリカントラディショナルとは何か?〜4つの時代的分類〜

まず「アメリカントラディショナル」は、アメリカの時代背景に沿って4つに分類できます。

 

この4つの分類が非常に重要です。

 

【1】トラディショナル・アメリカンスタイル(19世紀末〜20世紀初頭)

【2】アイビー・ルック(戦後1954年頃〜1960年代半ば)

【3】ブリティッシュ・アメリカンスタイル(1960年代後半〜1970年代)

【4】プレッピー・ルック(1980年代)

 

日本人に根付いている「アメトラ論」はこの中の【1】の時代の一部と【2】の時代を限定的に論じたものです。

つまり、かなり「点の話」をしているのですね。

 

時代区分が全く頭にないため、「ブルックスブラザーズ」と「J.PRESS」・「ポールスチュアート」と「ラルフローレン」を同時代のものとして平然と論じてしまえるのです。

 

ちなみに各社の創業は、以下の通りです。

ブルックスブラザーズ・・・1818年

J.PRESS・・・1902年

ポールスチュアート・・・1938年

ラルフローレン・・・1967年

 

ラルフローレンとブルックスブラザーズの間には、約150年の時代差があります。 実に1世紀半です。

日本に置き換えると、ブルックスブラザーズが創業した時日本は「江戸時代後期」で、ラルフローレン創業時の日本は「東京オリンピック直後」です。

これを一括りにして論じるのは、誰がどう考えても無理があると思いませんか?

「アメリカントラディショナル」とは、この4つのアメリカを代表するブランドが、それぞれの時代において、その時々にふさわしい服作り続けた結果生まれた「歴史的産物」というべきでしょう。

 

それでは、ここからいよいよ「アメリカントラディショナル」を時代背景に沿って順に追いかけていきます。

 

【2】アメリカンスタイルの原点〜トラディショナル・アメリカンスタイル〜

まずは、「トラディショナル・アメリカンスタイル」です。

時代区分で言うと、19世紀末〜20世紀初頭です。

この時代のキーワードは、「アイビーリーグ」「カスタム・テーラー」です。

19世紀末〜20世紀初頭にかけては「既製品」という考えがほぼなかった時代ですから、洋服は基本的に誂え(あつらえ)ものでした。

その為この時代の立役者は、主にアメリカ北東部のアイビーリーグの名門私立大学の所在地にある、カスタム・テーラーでした。

その代表例が「J.PRESS」です。

「J.PRESS」は1902年、ニューヘイブンにあるアイビー校の名門イエール大学のすぐ近くで、創業者のジャコビー・プレスが、一人一人採寸して仕立てる「カスタム・メイド」の店として歴史をスタートさせています。

その顧客のほとんどがイエール大学の学生かOBで、出入りしていたのは錚々たる面々であったことが知られています。

有名なのは、第41代大統領のジョージ・H・Wブッシュと、その息子で第43代大統領のジョージ・W・ブッシュがそうですし、日本人では昭和天皇の側近で、内閣総理大臣にもなった近衛文麿もイエール大在籍中に出入りしていたといわれています。

 

【ジョージ・H・W・ブッシュ大統領】

【ジョージ・W・ブッシュ大統領】

【近衛文麿】

その為、当時の店はさながら上流階級のサロンのようだったことが容易に想像できます。

 

では、明確な「アメリカンモデル」の服が確立していない19世紀末頃、名門大学近郊にあった「カスタム・テーラー・ショップ」では、どのような服が作られていたのでしょうか?

想像するに、この時手本にしたのは英国でしょうから、それは限りなく「ブリティッシュ・モデル」に近いものであったと思われます。

もともとアイビーリーグ自体、英国の名門校(ケンブリッジ大やオックスフォード大)をモデルにしてできた事を考えると、そのスタイルも大いに参考にして取り入れた可能性は高いと言えます。

こうして、当初参考にしたブリティッシュ・モデルが基礎となり、時代が進み20世紀に入ると、そこにアメリカ独自のエッセンスが加えられ、徐々に「アメリカンモデル」の源流が出来上がっていきます。

そして、

最終的にたどり着いたのが、1901年にBrooks Brothersが発表した「No. 1サックモデル」でした。

その特徴はこうです。

①シングル3ボタン中一つ掛けの段返り型

②肩は極めて薄いパッドを入れた「ナチュラル・ショルダー」

③ウエスト部分に全く絞りを入れない「ボックス・シルエット」

④背中は「センター・ベント」

 

【No.1サックモデル】

 

 

そして、これがその後につながる「アメリカン・スタイル」のすべての原型です。

 

こうしてできあがった「アメリカントラディショナルの原型」を元に、時代は「アイビールック」へと進んでいくのです。

 

〜続く〜

 

【参考文献】

 

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