数年前の寒い日に会ったとき着ていたコートを、
久しぶりに再会した今年の冬もまた着ている…
…そんなヒトに出会うと嬉しくなります。
「自分が一度好きになったもの」がそう簡単には変わらない、ということは素敵なことですね。
僕にもそんな〝一生モノ〟のコートがあります。
Gloverall(グローバーオール)のダッフルコートです。
このコートとも、気づけば7年の付き合いになります。
本当にありがとう。
ダッフルコートはもともと、極寒の海で仕事をする北欧の漁師が身につけていた仕事着だったと言われています。
17世紀後半ごろのことだそうで、当時の色は生成りだったようです。
『ダッフル』はベルギー郊外の都市〝デュフェル〟に由来します。
20世紀に入り、第二次世界大戦時にイギリス海軍で防寒着として採用され、戦後それが大量に払い下げられました。
ダッフルコートは、オリジナルに近いほど長く付き合えます。
長く付き合うための条件は2つです。
【1】一枚仕立ての厚手生地であること
1つ目の条件は「生地」です。
ダッフルコートに用いられる生地は「厚手玉絨」と呼ばれる毛織物です。
ウール素材を縮絨し、分厚い生地にして表面は起毛させることで、厳しい寒さ、風、雨をシャットアウトします。
オリジナルに近いほど、分厚く縮絨され、起毛しています。そして一枚仕立てなんです。
この生地は驚くほどに暖かい!まるで毛布のようです。
冷たい風は入って来ませんし、水を弾きます。
雪の日なんかは最高に役立ちますよ。
繰り返しますが、これが一枚仕立てなんです。
詳しくは、画像をご覧ください。
【2】木製の〝トグル〟と麻縄の紐であること
2つ目の条件は、トグルと紐の「材質」です。
トグルとは、浮き型の留め具です。
ここに漁師の仕事着の頃の名残が感じられますね。
現在は、水牛の角が用いられているケースもあります。
トグルの素材はまぁ正直どちらでもいいのですが、重要なのは、
トグルに引っかける紐の部分が〝麻縄〟であることなのです。
現在のダーッフルコートには、革紐が使われていることが多いです。
しかし、
この部分に麻縄を採用することで、耐水性の面で比較にならない程の効果を発揮します。
麻は、水を含むと強度が増すんです。
一方、革は水に触れると劣化します。
ですから、もともとこの紐の部分が麻縄だったのは、生死を分けるほどの極寒の地で働いていた人々の知恵なんです。
〝長い間受け入れられ、淘汰されないモノ〟
これを僕は〝一生モノ〟と呼びますが、その細かいディテールには、必ず理由があるのです。
皆さんにもそんな〝一生モノ〟ありませんか?
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