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英国人が認めた〝タフな服〟【2】 〜Barbour(バブアー )物語〜

 

英国人が認めた〝タフな服〟

〜Barbour(バブアー)物語〜

【2】

 

 

こんにちは。

このブログは、〝洋服屋の一生モノブログ〟というタイトルからも分かる通り、キーワードは、〝一生モノ〟です。

 

「〝一生モノ〟というフィルターを通してモノを見る」

ことで、世の中に氾濫したモノを一度篩(ふるい)にかけ、本当に良いモノだけを抽出していこう。というのが大きなテーマです。

 

前回の『Barbour(バブアー )物語【1】』では、19世紀末のイングランド・サウスシールズで、多くの労働者から厚い信頼を勝ち取った、創業当時のBarbourの歴史にスポットを当てて話を展開してきました。

 

今回の『Barbour(バブアー)物語【2】』では、いよいよ小さな港町で地元の人々に評価を得たBarbourが、英国中で認められ、大きな飛躍を遂げる20世紀に入っていきます。

 

興味がある人はぜひ、最後までお付き合いくださいね。

 

 

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【1】Barbour飛躍の時 〜2代目マルコムの手腕〜

時代が20世紀に突入した頃、店の経営は2代目のマルコム・バブアーに引き継がれていました。

そして1908年、マルコムは「Barbour」として初めてのカタログを出します。

地方のいちメーカーがカタログを発行するだけでも珍しかったこの時代に、Barbourはなんと、それを世界に向けて発送したのです。

 

ただこれには、この頃の英国の今とは違う国情が大きく関係しています。

 

19世紀半ばから20世紀初頭の英国は、今と違い「大英帝国」として各地に植民地政策を展開しており、広く世界情勢を見ても「帝国主義」の時代でした。

欧米列強の圧力から、日本で明治維新が起こったのも1868年のことですので、この時代とリンクします。

 

下の図の赤く色掛けされた部分が、20世紀初頭における英国の領土です。

※画像は Webから転載

 

これだけの領土を当時の英国は植民地として持っていたのです。

 

そして、

これは同時に、この時代それだけ多くの英国人が世界各地に出掛けていったということも意味します。

 

つまり、

2代目マルコムがこのタイミングで世界に向けて(正確には、世界中の英国植民地に向けて)カタログを発行したのには、時代背景に沿った明確な意図があったと言えるでしょう。

 

カタログの内容は、多くの需要をカバーするものでした。

 

一例をあげておきます。(画像は全て拡大できます)

 

【バイク用スーツ】

【乗馬用コート】

【軍事用コート】

【アウトドア用ウェア】

  

 

こうして見ていくと、「需要に応じて何でもお受けいたしますので、まずはご相談ください。」といった感じですね。

 

さらに、

カタログの認知度が広まり出すと、海外在住者の求めに応じて必要な物資を調達して送るという「バブアー・バイイング・サービス」というビジネスに着手するなど、良いと思った事はすぐに行動に移し、バブアーの知名度を世界中に広める努力を惜しみませんでした。

 

【海外居住者向けのバイイング・サービス】

 

 

とにかく、マルコム・バブアーの経営手腕は相当優れていたと言われています。

 

そんなマルコムの努力が身を結び、1920年代までにBarbourの知名度はぐんぐん上昇していきます。

 

そして、

そんな様々な需要に真摯に答え続けた結果、その中のひとつのカテゴリーが「Barbour」が世界へ飛躍するための扉を開けてくれることになります。

 

それが、

「モーターサイクルジャケット」でした。

 

 

【2】Barbour飛躍の時〜モーターサイクルジャケットの傑作〜

Barbour(バブアー)の歴史にとって、「モーターサイクルジャケット」は、世界への扉を開けてくれた重要なアイテムです。

 

結論から先に言ってしまうと、

1936年から1977年までの英国の世界選手権レースに参加したモーターサイクル・チームのほぼ全員が、Barbourのモーターサイクルジャケットを着用しました。

 

 

【1930年頃に撮影された英国のライダーたち】

 

 

そんな「モーターサイクルジャケット」の製品開発を軌道に乗せたのは、2台目マルコム・バブアーの息子であるダンカン・バブアーでした。

 

ダンカンの願いは、

「バイクというスピードが出る乗り物を、どのような気候条件の中でも快適に運転できるウェアの開発」でした。

 

彼自身がレースに参加するほどの本格的なバイク乗りだったことも功を奏し、試作品を作るごとにそのクオリティは高まっていきます。

 

そして、

開発を押し進める中で困った時に助けとなったのが、先代が開発した過去の製品でした。

 

直接役立ったのは「デューンムル・ジャケット」なるもので、これはブリザードが吹き荒れる中を、2輪の運搬バイクを運転して仕事をする人の為に開発された防風・防水コートだったそうです。

 

【バイクライダー用 ツーリング・コート】

 

先代が過去に地元の人々の為に開発した貴重なアーカイブに、ほとんど全ての答えが残されていました。

 

過去のそれは、襟の形、フロントの合わせ、ポケットの位置とサイズ、ストラップで閉じる箇所など、防水・防風の機能をほぼ完璧に捉えて作られていたのです。

 

ダンカンはそれを踏襲する形で懸命に開発を進め、

 

1936年、ついにモーターサイクルジャケットの歴史的傑作を世に放ちます。

 

その名は、「インターナショナル」

 

現在も「ビューフォート」「ビデイル」と並び、絶大なる人気を持って堂々とラインナップされている Barbourの名作中の名作は、このような時代背景の中で誕生していたのです。

 

【Barbour インターナショナル】

※画像はWebから転載

 

1954年に開催された6日間トライアルでは、オーストリア・ベルギー・オランダ・アイルランド・スウェーデン・スペインと世界各国から参加した選手の7割以上が、Barbourの「インターナショナル」を着用したと言われ、

 

その3年後のスコティッシュ・トライアルでは、なんと全員がこれを着用したとも言われています。

 

さらに、

1964年のトライアルでは、ハリウッドスターのスティーブ・マックイーンが「インターナショナル」を着用してレースに参戦しています。

 

【Barbourを着用した スティーブ・マックイーン】

※画像はWebから転載

 

この時すでに、モーターサイクル分野にBarbourは無くてはならない存在となっていました。

 

そして、

その需要はモーターサイクル分野にとどまらず、軍や警察のパトロール部隊へと広まっていくのです。

 

 

 

【3】Barbourの飛躍から学ぶ事

20世紀におけるこの「Barbour」飛躍の物語は、現代人の多くが忘れてしまった「大切な事」を僕たちに教えてくれています。

 

それは、

自分が好きなもの、得意な事を突き詰めること。

 

さらに、

それを必要としている人に届けるために、形にして広めていく事。

 

そして、

その先に、思わぬ成功が待っているという事です。

 

その各ステップが次のようなものです。

 

①「インプット」

→自分の得意分野を突き詰めて研究する。

これがBarbourの場合、創業者ジョン・バブアーによる防水・防風生地の研究・開発の時代です。

 

②「アウトプット」

   →自分の得意な事や技術・知識を形にする。

これがBarbourの場合、ジョン・バブアー が店を開き、地元の労働者に向けて製品を次々と作り、提供していった時代です。

 

③「拡散」

  →自分のしている事、役に立てる事を多くの人に知ってもらう。

これがBarbourの場合、2代目マルコム・バブアーが 世界に向けてカタログを発行した時代です。

 

そして、

こう言った準備段階を経て、多くの人に名前が知れ渡り、ある程度拡散しきった時、一気に飛躍の時を迎えます。

 

これは、

ビジネスを成功させる上で、いつの時代も変わらない「普遍的ロール・モデル」なのです。

 

 

 

皆さん、

本当に自分が好きだと言える事・自信を持って得意だと言える事を仕事にしていますか?

 

 

そしてそれは、誰かの役に立っていますか?

 

 

 

 

 

次回の「Barbour物語【3】」では、

Barbourの名を世界に知らしめたもうひとつの出来事、「第2次世界大戦とBarbour」について書き進めていきますので、どうぞお楽しみに。

 

 

 
【参考文献】

 

コメント

  1. Jinのどろーいんぐ  Jin より:

    はじめまして
    私、有名人の鉛筆画似顔絵を描いているものです

    タニヤン様の様々なメンズアイテムに対する確かな紹介につきましては
    思わず共感してしまう内容でモノの一つ一つへの愛着を感じます

    このBarbourもかなり大昔に映画雑誌でスティーブ・マックイーンのスナップを見て
    そのデザインに憧れましたが、当時は扱っているショップなどほとんどなく
    何十年も頭の片隅にしまってましたが
    10年ほど前から何着か買い揃えています
    上手く言えませんがこのBarbourとにかく存在感がありますね

    私自身、映画が好きでメンズファッションに関しては
    そのシーンや人物からかなり高い影響を受けました
    私のブログ上で時々ですがそんな印象的な画をアップしております
    Barbourではありませんが数年前にデビット・ベッカムのBelstaffを描きました
    (最近は私の年齢に似合わず描く人物はミーハーな内容になりつつありますが^_^;)

    これからもタニヤン様のモノの素晴らしさの紹介
    私も大いに楽しみにしている一人です

    Jinのどろーいんぐ(FC2ブログ) Jin  

    • タニヤンタニヤン より:

      Jinさん

      はじめまして

      コメントありがとうございます☆★

      「Barbourには存在感がある」というのは僕もよくわかります!
      やはり、使う人のことを極限まで突き詰めた結果として、完成形に到達したからでしょうか。

      Barbourに限らず、時代を超えて評価されている服には同じようなオーラを感じます。

      イメージとしては、古着でそのものを見た瞬間に、辿ってきた時間軸も一緒に見えてくるというか。そんな感じです。

      Belstaffも、使い古されレザーのようになった年代物を見た時などは、鳥肌が立ちます。

      これからも、洋服の魅力を最大限伝えれられるような記事を書いていきますので、宜しくお願いします!

      僕は絵が上手に書ける人に心底憧れます☆★
      特にモノクロの鉛筆画は、1番心に響きます。

      ステキな仕事ですね☆

      谷岡

  2. 島田 より:

    こんにちは。

    今回初めてブログを読ませていただいたものです。

    自分は古着を多少着るのでBarbourについては
    名前くらいは知っていましたが
    Barbourのブランドの裏には
    素晴らしい探求心とセールスの極意が隠されていることを
    このブログを読んで知ることができました。

    今後もブログの更新楽しみにさせていただきますので
    よろしくお願いいたします。

    • タニヤンタニヤン より:

      島田さん

      こんにちは、はじめまして。

      ブログ読んで頂いてありがとうございます。
      島田さんは古着着るんですね。とても親近感が湧きます。

      僕も服のスタートは古着からです。大学時代のことです。

      と同時に、古着屋のオーナーに服の面白さと奥深さを教わりました。
      毎日ノートとペンを持って入り浸ってました(笑)

      僕たちが見ている服で突然ポンっと出来上がったものはありません。
      先人たちがどこかで生み出したものが進化(もしくは退化)したものです。

      流行についても、洋服の過去の時間軸をどこかで横に切ったものですから、服飾史を知っていれば大体説明がつきます。

      僕はとにかく洋服の面白さや奥深さを知ってもらいたいので、島田さんのように感じてくれる人がいると本当に嬉しいんです。

      これからも気軽にコメントしてくださいね。

      今後、僕が「ここは良い」という古着屋も紹介していこうと思っていますので楽しみにしておいてください☆★

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