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英国人が認めた〝タフな服〟【最終話】〜Barbour(バブアー )物語〜

 

英国人が認めた〝タフな服〟

〜Barbour(バブアー 物語)〜

【最終話】

 

 

こんにちは。

このブログは、〝洋服屋の一生モノブログ〟というタイトルからも分かる通り、キーワードは、〝一生モノ〟です。

 

「〝一生モノ〟というフィルターを通してモノを見る」

ことで、世の中に氾濫したモノを一度篩(ふるい)にかけ、本当に良いモノだけを抽出していこう。というのが大きなテーマです。

 

前回までの『Barbour(バブアー )物語』では、Barbourの名前を広く世に知らしめるきっかけとなった「モーターサイクル分野での飛躍」と「第2時世界大戦時のミリタリー・ウェア」について書きました。

 

長くなりましたが、いよいよ今回が最終話です。

この『Barbour(バブアー )物語【最終話】』では、英国王室に愛され「ロイヤル・ワラント」を全て授かった、20世紀後半のBarbour栄光の歴史にスポットを当てていきます。

 

どうぞ最後までお付き合いください。

 

 

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【1】ロイヤル・ワラントという栄誉

英国には、「ロイヤル・ワラント」という制度があります。

正確には「ロイヤル・アポイントメント制度」と呼ばれ、正式に制度化されたのは、1840年のことです。

 

この「ロイヤル・ワラント」というのは英国特有のもので、簡単に言うと「英国王室御用達」という意味です。

 

【エリザベス女王を中心とする、英国ロイヤル・ファミリー】

 

 

と言っても、日本の「皇室御用達」とはかなり性格が異なっています。

 

日本で「皇室御用達」と言うと、ただ単に茶菓子なりお香なりが皇室によって買い上げられているという事実に過ぎないですが、

英国ではこの「ロイヤル・ワラント」が与えらたと言うことは、王室がその商品なりサービスを利用しているということにとどまらず、その会社や商店は「王室の紋章を商品やパンプレットに自由に利用することが出来る権利」を与えられるのです。

 

これは日本の会社や商店が、皇室の「菊の御紋」を自社の宣伝の為に自由に使える権利を与えられたことと同じです。

日本ではそんあことありえませんよね。

 

この「ロイヤル・ワラント」を下賜できる権利を持っているのは英国王室の人間と言えども3人だけで、この3人に認められた会社や商品は最大3つのロイヤル・ワラントを保有できます。

 

①英国王

  →現在はエリザベス女王

【エリザベス女王の紋章】

 

②英国王の配偶者

  →現在はエリザベス女王の夫、エジンバラ公

【エジンバラ公の紋章】

 

③皇太子

  →現在のプリンス・オブ・ウェールズ(チャールズ皇太子)

※「プリンス・オブ・ウェールズ」は、伝統的にイギリス王家の長男が名乗る称号です。

ちなみに、次男は「プリンス・オブ・ヨーク」、三男は「プリンス・オブ・ケント」です※

 

【プリンス・オブ・ウェールズの紋章】

 

 

そして、

「英国王室御用達」が日本の「皇室御用達」と決定的に違う点は、「かつて一度だけお買い上げいただいた。」というような〝昔話〟ではないということです。

 

原則として、最低でも10年の継続的取引があってはじめて「ロイヤル・ワラント・ホルダー」に相応しいかどうかの審査が始まり、その審査を無事通過すると、「勅許状」としてロイヤル・ワラントが下賜されるという仕組みになっています。

 

このように厳格な審査を見事に通過して、ひとたびこの「ロイヤル・ワラント・ホルダー」になれば、王室は必ずその製品を日常生活・公式の用を問わず使用してくれます。

 

そして、

こうなれば同業他社は割り込むことが大変難しくなり、商売上かなり優位な立場に立てるということを意味しています

 

しかし、

それでも決して安泰というわけではなく、「ロイヤル・ワラント」には条件が細かく明記されており、もしその条件が変われば返還を求められます。

 

つまり、

もし職人の技能が落ちたり後継者が育たなかった場合、容赦なく「ロイヤル・ワラント・ホルダー」の地位を剥奪されるということです。

 

その為、

英国には、このロイヤル・ワラント・ホルダーだけの連合会が存在します。

独自の事務所を持ち、そこに互選された役員達が定期的に召集され、そこで「ロイヤル・ワラント・ホルダー」としての品位の保持、商品やサービスの品質向上などが真剣に話し合われています。

 

このように、本当に大変なのは任命されてからの品質保持や技術継承の方で、この構造が英国製品の質の高さを下支えしていると言っても良いでしょう。

 

「英国王室御用達」と言っても、決して楽なものではないのです。

 

 

【2】全てのロイヤル・ワラントを保有する「Barbour」

そんな栄誉を3つとも授かった英国でも数少ないメーカーが、「Barbour」です。

 

『Barbour(バブアー )物語【2】』・『Barbour(バブアー )物語【3】』で見てきた通り、Barbourは20世紀初頭〜20世紀半ばにかけて、モーターサイクル分野での成功と第2次世界大戦でのミリタリー・クロージングの提供で知名度とその品質の高さを証明していった歴史を持ちます。

 

そして、

極め付けがこの「3つのロイヤル・ワラント」獲得です。

 

このロイヤル・ワラント獲得の大きな要因は、「乗馬用ジャケット」と「ハンティングジャケット」にあるでしょう。

 

英国では古くから王族・貴族を中心にハンティング、乗馬、バード・ウォッチング、フライ・フィッシングといったアウトドア・スポーツが高貴なものとして生活の中に息づいています。

こういったアウトドア・ライフを趣味にしていることが、その人の信頼と人間性を高めることにもなり、ただ単に趣味の問題として片付けないところが、いかにもイギリスらしくて良いところでもあります。

 

そして、

これらのアウトドア・スポーツを楽しむ際に、抜群の機能性はもちろんのこと、女王をはじめとするロイヤル・ファミリーが求める品格も兼ね備えていたのが、「Barbour」のアウトドア・ウェアだったのです。

 

機能面はこれまでの記事の中でずっとご紹介してきたので、改めて言うまでもないことですが、

Barbourの生地に使われているオイルは『ソーン・プルーフ・ドレッシング・オイル』というもので、「ソーン」すなわち茨(いばら)をも防ぐという意味が込められています。

Barbourのオイルド・コットン製の防水生地は、ハンティングやフライ・フィッシングで山や渓流に足を踏み入れる祭、茂みや岩と言った危険な環境から体を守り、突然の雨にも耐えうるという、非の打ち所のない機能性を持っていたのです。

 

さらには、

野外といえどもネクタイを着用することが多いロイヤル・ファミリーにとって、Barbourが醸し出す品の良い雰囲気は、彼らのスタイルにも違和感なく馴染んだし、セージ・グリーンという独特の色味は田園風景にも見事にマッチしました。

 

こうしたことから、

エリザベス女王とその夫のエジンバラ公、そしてチャールズ皇太子の3名ともが「Barbour」を公私ともに愛用しています。

 

まずは、1974年にエジンバラ公から1つ目のロイヤル・ワラントを授けられます。

【1ワラント時代(1974年〜1981年)】

 

 

続いて、1982年にエリザベス女王から2つ目のロイヤル・ワラントを。

【2ワラント時代(1982年〜1986年)】

 

そして1987年、チャールズ皇太子から3つ目のロイヤル・ワラントを授かります。

【3ワラント時代(1987年〜現在)】

 

こうしてBarbourは、3つ全てのロイヤル・ワラントを掲げる英国でも数少ない名誉あるメーカーとなりました。

 

そして、

現在においても品質を決して落とすことなく、その実力を世界に見せつけているのです。

 

 

【3】僕が愛用しているオイルドクロスのハンティングジャケット

最後に、僕が長年愛用しているオイルドクロスのハンティングジャケットをご紹介して終わりにします。

 

僕が6年間、愛用しているのは「Brooks Brothers」のオイルドクロスのハンティングジャケットです。

 

【Brooks brothersのオイルド・ジャケット】

生地に使われているのは、Barbourのものと全く同じオイルド・コットンです。

毎年秋口になると、自分でオイルを塗り直して着ているため、ポケット周りなど、かなりいい雰囲気になってきました。

この部分、かなり気に入っています。↓↓

 

裏地には、これまた英国の伝統的チェック柄である「タッターソール・チェック」が貼られており、とても良い雰囲気です。

 

このオイルド・ジャケットは、僕の自慢の〝一生モノ〟のアウター・ウェアです。

 

これからも大事に手入れをして、10年・15年と一緒に時を過ごしていきたいと思っています。

 

 
【参考文献】

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