「靴よ、僕を天国へ運んでくれ」
〜フレッド・アステア 『That’s Entertainment PARTⅡ』より〜
突然ですが、皆さんは
「何の為に靴を履くのか?」、真剣に考えたことはありますか?
安心してください。
ほとんどの人は、そんなことをまず考えませんので(笑)
僕は仕事柄、こういう事を毎日考えているのですが…
これまでこのブログ内では、僕の〝一生モノの靴〟として6足ほど紹介してきましたが、ここで一旦ハーフタイムをとって今回は、
- 「私達はなぜ、靴を履くのか?」
- 「靴が果たす役割とは一体何なのか?」
この〝根本的な設問〟について、考えてみようと思います。
この機会に皆さんもぜひ、一緒に考えてみてください。
さて、いきなり結論から申し上げます。
- 自分の体を乗せ、自分の体を運ぶため
- 自分自身の身なりを体現するため
この2つこそ、私達が靴を履く理由です。
ひとつずつ解説していきましょう。
【1】靴は人を乗せ、人の体を運ぶ
ひとつ目の役割は、極めて原始的なモノです。
履物の歴史を遡ると、
「開放性履物(サンダルの類い)」と「閉塞性履物(革靴の類い)」に分類されます。
前者は、比較的移動の少ない人々が履きました。例えば、場所を移動しない農耕民族や、古代のエジプト王などです。
一方で後者は、長距離の移動を強いられた人々が履きました。例えば、狩猟民族や古代ローマの戦士達です。
彼らは、移動のために足を厳重に保護する必要があったので、皮袋に足を突っ込み、皮紐で足首を縛りました。
革靴の原型です。
このように履物(靴)は、時代時代のオーダーを受けて、様々な形に進化して来たのですが、その長い長い歴史の中で、いつの時代にも共通して存在して来たものがあります。
それが「人を乗せて、人の体を運ぶ」という役割です。
これは非常に基本的なことですが、私達が靴を履く上で「絶対に外せない役割」です。
ちなみに…
靴が人を乗せて、人の体を運ぶ時、最も大切なことは、人の足と靴が〝一体化〟することです。
〝一体化〟するために必要な絶対条件は「履き心地」です。
そしてその「履き心地」を追求する上で必要な絶対条件は、「フィッティング」つまり、サイズ選びです。
私達現代人が、この「フィッティング」の行程をいかに疎かにしているかは、街のビジネスマンの足下を見ていれば、一目瞭然ですよね…
【2】 靴は、その人の身なりを体現する
「ねえ、あの人はきっと立派な人なんでしょうね。」
「えっ、なぜ君はそう思ったの?」
「だってあの人、しっかりと手入れされた靴を履いていたもの…」
これに似たような台詞、映画や小説の中でよく見かけませんか?
実は、これこそが靴の〝もうひとつの役割〟を非常によく表している会話なのです。
それが、「靴は、その人の身なりを体現する」という二つ目の役割です。
つまり、この会話の中の人物にとって、「立派な人の服装」に「しっかりと手入れされた靴」は欠かせないモノなのです。
その他にも、優秀なホテルマンは、お客様の靴が手入れされているかどうかをしっかり見ている。とか、
「ドレスコード」があるようなレストランでも靴が見られている。などという話は、一般的にも有名な話ですよね。
このように ビジネスやフォーマルの場において、自分を印象付ける上で、「しっかりと手入れされた靴」が果たす〝決定的な役割〟は、もはや疑いようのない事実なのです。
ということで、
ここまで「なぜ、靴を履くのか?」という設問に対して、
- 自分の体を乗せ、自分の体を運ぶ為
- 自分自身の身なりを体現する為
という2つの答えを出し、それを解説してきました。
では、現実はどうか…
僕は定期的に街に出て、ビジネスマンの観察を行なっています。
その中での考察として言えるのは、
現状日本のビジネスマンの大多数が、
【1】自分の体を乗せ、自分の体を運ぶ
ことのみを「靴を履く理由」として採用している。という事。
しかもその安易な選択の結果が 、今日 日本の「サラリーマン」に多く見られる〝ギョウザ靴〟です。
しかし、そんなうんざりするような大群ばかりが通り過ぎる中に、
【1】自分の体を乗せ、自分の体を運ぶ
ことは当然の事とし、最高の履き心地を得る為、プロに抜かりないフィッティングをしてもらい、
【2】自分自身の身なりを体現する
ことを強く意識して、上質な靴を履いている「ビジネスマン」が少ないながらも、一定の割合でいる事も事実です。
そういう人は、本当に浮き立って見えます。
そして…
「きっとあの人は、立派な仕事をする人なんだろうなぁ」
「だって、しっかりと手入れされた靴を履いているから…。」
と思う訳です。
つまり、何が言いたいかというと「見ている人は見ている」という事です。
ここではっきり言っておきます。
スーツの外見は、分からない人にとって見れば〝みな同じ〟です。
そして、服に精通している人でない限り、
あなたが仕事などで会う人の大半は、その「分からない人」である可能性が極めて高いのです。
スーツはそれほどに〝表情が少ない〟モノなのです。
しかし 靴は顔が鮮明な為、しっかりと手入れされたモノであれば、誰が見てもすぐに分かります。
「あの人、なんだか良い靴履いてるなぁ…」と相手が思ったこの瞬間…
語らずして、「靴」があなたの身なりを体現してくれているのです。
これが、靴を投資するモノの中の最優先に位置付ける人が多い理由です。
これが、「お洒落は足下から」と言われる理由です。
そしてこれが…
私達が〝靴を履く理由〟なのです。
【参考文献】
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