アイビーリーガー達の〝おまじない〟
〜ペニーローファー〜
こんにちは。
第10回目となりました、〝一生モノの靴〟シリーズです。
今回は、日本でもすっかりお馴染みの「ローファー」について取り上げます。
意外と知られていない「ローファー」の起源や、どのようにして、今日のような多くの人々に愛される存在になって行ったのか。
など詳しくお話ししたいと思っています。
どうぞ最後までお付き合いください。
【1】〝一生モノ〟のローファー紹介
まず初めに、僕が長年愛用している〝一生モノ〟のローファー達の中から、とっておきの一足をご紹介します。
この子とはもう、かれこれ9年の付き合いになります。キズも多くなってきましたが、とても大事に履いている靴です。
【ALDEN ペニー ローファー】
【素材はカーフで、色はALDENの〝#8〟 ダーク・バーガンディ】
【2】ローファーの起源
現在一般的に「ローファー」という愛称で親しまれているシューズの正式名称は、「ノルウィージャン・フッシャーマンズ・シューズ」です。
この名称から分かる通り、「ローファー」のルーツは北欧にあり、ノルウェーの農民や漁師が作っていた、独特のモカシン縫いの靴が起源とされています。
このノルウェーの漁師の靴が、初めてファッションとして歴史の舞台に登場するのは、1920年代のロンドンです。
お洒落に敏感な英国紳士の目に留まり、主に彼らのカジュアル靴として脚光を浴びます。
そして1930年代には海を渡り、アメリカでこのシューズが大流行し、その後、アメリカンスタイルの代表的なアイテムとして定着していきました。
【3】アメリカでの繁栄
靴好きの方なら聞いたことがあるかと思いますが、「ローファー」には、「のらくら者」とか「怠け者」といった意味があります。
紳士靴といえば、レースアップ(紐靴)シューズが当たり前だった時代に、紐なしで簡単に足入れが出来る「ローファー」独特のリラックスしたイメージが、「怠け者」という風に捉えられたのでしょう。
この「ローファー」という名称は、1930年代にアメリカの「A.E.ネットルトン社」が世界で初めて使い、その後商標を取っています。ですから、当時は「ローファー」という呼び名は、アメリカでしか通じなかったのです。
そして、ネットルトン社が世に生み出した「ローファー」を完全に定着させたのが、G.H.Bass社が1936年に発表した、「Weejuns(ウィージャンズ)」でした。
この「Weejuns(ウィージャンズ)」という名前はもちろん、その起源である「Norwegian(ノルウィージャン)」すなわち、「ノルウェーの」という言葉が由来となっています。
このBassの「ウィージャンズ」が、1950年代〜1960年代にかけて一大トレンドとなった〝アイビー・ルック〟の足元を飾る定番アイテムとして大流行します。
そしてこの〝アイビー・ルック〟は、1960年代に登場した「VAN」により、日本にもやってきます。とりわけ当時の「みゆき族」達の憧れの靴としてその後急速に浸透して行き、現在に至ります。
【4】アイビーリーガー達の〝おまじない〟
「ローファー」には、〝ペニーローファー〟とか〝コインローファー〟といった愛称で呼ばれるデザインのものがあります。
それがまさに、今回紹介している写真のALDENのローファーであり、Bassの「ウィージャンズ」のような、「甲の上にスリットの入ったベルトを渡す」デザインのモノです。
(下の写真を参照してください。)
これが、1950年代のアイビーリーガー達の間で大流行しました。
下の写真は、当時のアイビーリーガー達のキャンパスでの様子です。
この通りアイビーリーガーの足元の多くは、ローファーだったのです。
【出典:『TAKE IVY』】
彼らはローファーのスリットの中に、〝幸運のお守り〟として1セント銅貨を挟み込みました。
アメリカ人は1セントコインを「ペニー」と呼びますので、そのうち「ペニー・ローファー」と呼ばれるようになって行ったのです。
今となっては、私たちに最もお馴染みのデザインですよね。
ちなみに1セント銅貨には、「自分の生まれ年の1セント銅貨は幸運を呼ぶ」や「朝一番に拾った1セント銅貨は幸運のお守りになる」など様々な幸運の言い伝えがあるそうですよ。
日本の硬貨にはそんな言い伝えはありませんので、少し違和感がありますが…
今同じ事をして町を歩くと、かなり〝イタい人〟に見られると思うので、僕はオススメしません(笑)
この他にもローファーには、〝タッセル・ローファー〟や〝コブラバンプ・ローファー〟〝サドル・ローファー〟〝ビーフロール・ローファー〟など、様々なデザインのものがあります。
また、それらはそれぞれに違った魅力を備えており、一言で「ローファー」と言っても、非常に奥深いものがあるのです。
皆さん、履き慣れたいつものスニーカーやサンダルも良いですが、この夏はぜひ、軽快にローファーを履きこなしてみてください。
【参考文献】
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