〝靴を大切に履く〟ということ【2】
〜シューキーパーの役割〜
こんにちは。
久しぶりに、靴のことについて書きます。
以前、『〝靴を大切に履く〟ということ【1】』の中で、
「靴を大切に履く」とは、「靴をメンテナンスすること」であり、
「メンテナンス」とは、
① アッパーの「維持」(保革)
靴の顔である甲革の健康を、いつもベストな状態に維持しておくこと。
② アウトソールの「整備」
最も過酷な環境に晒されているアウトソールを、いつでも履ける状態に整備しておくこと。
であると定義付けした上で、
②の「アウトソールの整備」について、その時期や方法などをお伝えしました。
今回はその第2弾です。
順番的に、①の「アッパーの維持(保革)」に入って行きたいのですが、
その前に、靴を履くにあたって、必要不可欠なことについて触れておきます。
それは、保管時の〝シューキーパーの常用〟です。
「アッパーの維持(保革)」の前に、
この「シューキーパー」が果たす〝大きな役割〟について、ぜひ皆さんに知って欲しいと思っているので、どうぞ最後までお付き合いください。
【1】靴の爪先の〝反り〟について
皆さん、靴の爪先の〝反り〟に注目したことがありますか?
靴というのはその製法に関わらず、製造段階でラスト(木型)を使って、爪先を予め「12ミリ〜13ミリ」反らせてあります。
この爪先に施された僅かな〝反り〟は、安全に歩行するための知恵です。
〝反り〟がなければ、人はすぐにつまずいてしまいます。
さらにこれは、「ヒールの高さ」と密接に関係しています。
紳士靴・婦人靴に限らず、靴はまず「ヒールの高さ」が決まって、それから「反り」の数値が決定されます。
一般的な紳士靴のヒールの高さは、20ミリ〜30ミリです。
それに対して、爪先の反りは新品の状態で、12ミリ〜13ミリというのが、全体の見た目にも非常に美しいバランスなのです。
こうして緻密に計算されて作られた靴の爪先は、人が足を入れて日常歩く事で、さらに大きく反っていきます。
爪先の反りをできるだけ少なくし、より最初の〝12ミリ〜13ミリ〟に近い数値をキープできれば、その靴はいつまでも「美しいスタイル」を保つことができます。
目安として、〝床から20ミリ以内〟をキープしましょう。
〝爪先の反りが少ないほどに、靴は美しく見える〟
皆さん、これはぜひとも覚えておいてください。
【2】「靴の体型維持」の大きな味方 〜シューキーパー〜
では、どうやって爪先の〝反り〟を20ミリ以内にキープするのか?
ここで登場するのが、「シューキーパー」です。
シューキーパーは、靴を作る時の元となる「ラスト(木型)」から考案され、その靴の木型の中央を縦に切断し、前後をスプリングで繋いだものです。
靴というのは履けば履くほどに、刻々とカタチが変形していきます。
「シューキーパー」の役割は、
- その変形を修正することと、
- 爪先の〝反り〟を防止すること
にあります。
「シューキーパー」を入れていない靴は、まず横に広がり、それに比例するように爪先が反り返ってきます。
これを放置していると、ストレッチャーなどの専用工具を使用するなどしない限り、元に戻らなくなります。
電車などでビジネスマンの靴を観察していると、
多くの人は爪先が大きく反り、中には40ミリ以上爪先が反り返ってしまっている人もいます。
こういう人は、次のどちらかです。
- 日常的にシューキーパーを使用していない
- オーバーサイズの靴を履いている
1.の人は靴がもったいないので、今すぐシューキーパーを購入して習慣的に使用してください。
2.の人は、靴を買う時にプロにしっかりとフィッティングしてもらい、「自分の足に合ったサイズの靴を履く」ところからスタートです。
オーバーサイズの靴を履いた人というのは、歩いていてもすぐに分かります。
一番みっともない靴です。
【3】僕が愛用している〝シューキーパー〟
では、どのようなシューキーパーを選べばいいのか?
最低限の条件として、
- 木製のモノ(レッド・シダーなど)
- 靴に対して、なるべく「キツめ」のサイズのモノ
- 必ず1足につき1つ用意し、使い回さない。
この3つは必ず守ってください。
この中でも特に、「木製のモノ」というのは必須条件です。
プラスチック製の簡易シューキーパーを入れるくらいなら、新聞紙を丸めて入れる方がよっぽどマシです。
では、最後に僕が愛用している〝シューキーパー〟を紹介します。
【Brooks Brothersのレッド・シダー製シューキーパー】
【長さと幅を調整できるようになっています】
繰り返しますが、
爪先の反りが少ないほどに、あなたの靴は美しく見えます。
そして…
あなたの靴が、美しいスタイルをいつまでも維持する為に、
つまり、あなたの靴の寿命を大きく伸ばす為に、
「シューキーパー」が果たす役割は、想像以上に大きなものです。
〝靴を大切に履く〟というのは、そういうことなのです。
【参考文献】
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